2007年3月25日日曜日

システミックリスク

(2006年1月19日 Livedoor Blogより再掲)

東証が場中に取引を強制的に止めたという前代未聞の出来事が昨日起きたが、これについて思ったことをふたつ。

ひとつめは証券取引というグローバル市場への影響も含めてミッションクリティカルの際たるシステムがなぜこれほど余裕のない設計になっているのかということ。

以前、「東証誤発注の背景」というエントリーで書いたが、東証のシステムの問題は処理できる注文件数や約定件数だけではなく、受発注のレスポンスタイムにも大いにある。スケーラビリヒティの面でも通常はシステム増強のためのリードタイムも十分に考慮して大きめのバッファをもってシステム規模の設計が為されるべきところだが、東証の場合、「想定外」の事態とはいえ、処理件数が一日二日で倍になったわけではないのにこの体たらくは醜態以外の何物でもない。東証の西室会長はライブドアがどうこう言う前にまず自らの責任を痛感すべきである。

特に問題の本質が「注文数が増えた」ということ以上に「約定処理ができない」というクリアリングとのバックエンドにあるというのは個人投資家が増えて小口の取引が増えたとかライブドアショックとか以前に純粋な東証の危機管理の問題である。

ふたつめに、同様の危機管理の問題で言えば、事情説明のためとはいえ具体的な処理・約定可能件数を公表するのはいかがなものかと思う。今回のことで東証のシステミックリスクレベルが丸裸になったわけで、意図的にアタックしようと思えばどの程度で東証を落とせるかという妙な情報を開示してしまった。そんな一国の証券取引市場が簡単に落とせるかと思う人も多いかもしれないが、事実、東証のアラートで一般株主がパニック売りに走って指数が下がったという前例ができた以上、意図的に下げたい勢力が下げたい時に何かをしかけることはそれこそ今後は「想定内」だと思ったほうがよいのではないか。海外から束になってかかられた結果、壊滅的な影響を受けた市場が過去にないわけではないのだから。

結論を言うと、
1)東証は取引時間は厳守すべきである。今でも時短をすべきではない。
2)システムは逐次増強ではなく、一気にかつ大幅に増強すべき。かつレスポンスタイムまで含めた抜本的なシステム更改を考えるべき。
3)システム処理能力の情報は非公開にすべき。ということである。

現在は日本市場に利用価値があるからいいが、利用価値がなくなってきたら良からぬことを考える輩が出てこないとも限らない。当面は信用買もさることながら、「意図的な調整局面」の兆候がないか信用売残の推
移にも注目しておこうと思う。まあ、上がれば下がるし、下がれば上がるのが相場の常であるが。

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