2007年3月15日木曜日

「通信と放送の融合」の本質(その1)

(以下の記事は2005年10月17日にLivedoor Blogに投稿していたものを現時点に於いても考察として何らかの意義があるであろうということで再掲するものである。事実、この記事は各種検索エンジンサービスによってもかなり多くの閲覧を得、その後発表された多くの著作にコンセプトを『応用』されている。その功績?に苦笑しつつ・・・。)


楽天の動きを契機にまた「通信と放送の融合」というキーワードがメディアをにぎわわせている。この動きは「融合」という言葉で錯覚しやすいが本質的には「消費者属性情報を誰が握り、広告宣伝費と販売促進費
という大きなマネーフローを誰がどのように握るか?」という点に帰結する。

よって単に企業間の合従連衡のパターンがどうかとか融合したビジネスがどうつくれるかという表面的な議論では事の本質はつかめない。

言い古されていることも多いことを承知で少し謎解きをする。

1)現在のマス4媒体(テレビ・ラジオ・新聞・雑誌)はスポンサー企業の広告出稿、イベント等のSP費用によってコンテンツを製作・編成して収益を得ている。これはメディア媒体がスポンサー企業の広告宣伝販促行動にとって効果的だという前提(いまや幻想)によって支えられている。しかし、マス4媒体を通じて流れる広告は最終消費者に必ずデリバリーされているわけではない。また、消費者の属性に応じた効果的な広告のデリバリーが行われていない以上、スポンサー企業にとってのROIは低位安定するという宿命がある。

2)インターネットと携帯の普及はスポンサー企業が媒体から最終消費者の属性を得ることができれば、より購買行動に結び付けやすい広告宣伝販促をダイレクトにリアルタイムにかつ選択的に流すことを可能とする。

3)楽天やアマゾンといった新興IT企業(かつ現時点で馬群を抜けてとりあえずの勝ち組になっている企業)は自社のサービスを利用している消費者の性別・年齢・住所・関心事・過去の購買履歴という消費者属性情報を莫大に蓄積している。他のインターネットメディアも少なからずそうである。この属性情報は広告宣伝販促を行おうとするスポンサー企業からすれば喉から手が出るほど欲しい「お宝情報」である。とにかく企業ブランドを広めればよいと考える企業は除いて、直接広告の受け手に購買行動を取らせたい企業にとって、マス4媒体ではリーチし得ない消費者にダイレクトに繋がることを可能とするインターネットと携帯は新しいメディアだ。そうなるとROIに敏感な企業ほどネット広告・携帯広告にシフトしていくことは自明である。放送局の収益がさがって、新たなメディアが収益を伸ばしているのはそういうことだ。

4)ところが、現在のIT企業はまだこの可能性を十分に開花させてはいない。自社のサービスを通じて得た消費者属性情報はもっぱら自社のサービスをさらに利用させることに活用されている。しかし、もう彼らは気づいてしまった。

5)現在の日本の広告宣伝費・販促費市場は約5兆円。この、今までマス4媒体に独占されてきた莫大なマネーフローを自分達のフィールドに寄せることができたら・・・・。そしてそれは可能なところまで来ているのだ。自分達が従来のマス4媒体に成り代わるメディア企業になればよいのだから。

6)消費者の可処分所得・可処分時間には限界がある。IT系のサービスが今後いくら便利になろうとも、最終消費者から「引っ張れる」金には限界がある。既に通信キャリア系IT企業が音声ビジネスやインターネット接続サービス+αのサービスを提供しているが、これらは競争と価格低下で数年以内に無料か公共財として限りなく安いサービスに成り果てる。よって今、勢いのあるIT企業とはこうした無料化へ向かうインフラサービスの上で展開するプロダクトを持っている企業であり、属性情報を着々と蓄積している企業である。さりとてこうした企業でも利用料、手数料収入には限界がある。時代とともにインフラサービスの二の舞になって価格低下圧力と過当競争によって収益が圧迫され始めることは見えている。となれば5兆円市場を誰がいつ巧妙に自社収入として取り込んでいくかが鍵になっていくことは論を待たないであろう。

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