2007年5月11日金曜日

(書評) 革命社長



もうトリンプからは引退してしまったが、それまで19期連続増収増益、しかも
売上げは5倍に増やしながらバックオフィスのスタッフは増やさずに維持した
名経営者、吉越 浩一郎氏の本。

ご自身で本文を書きながら、時折一緒に仕事をした役員、新人スタッフ、トレー
ナー、工場長らが傍証するように吉越イズムについて語っていく構成で進む。

やっていることはノウハウの巣といってもいいが、肩に力が入るわけではなく
「それが当然でしょう。なぜ皆それくらいのことができないの?」という感じの
飄々とした静かなる信念を感じさせる。

1)毎朝の早朝会議で90分程度の間に40~60の案件をサバき、フラットな
議論をベースに全員に当事者意識を持たせ、「いつまでに誰が何をやるか」とい
うデッドラインと役割分担を明確にし、全参加者で共有する。
2)午後の二時間は「がんばるタイム」として電話、会話をせずに社員が自分の
仕事に集中する。
3)6時半に会社の電気は消し、残業はさせない。
4)翌朝の早朝会議で進捗チェック(前日の課題は基本的に翌日までに解決
報告しなければならない)

大きくはこのサイクルである。しかし、これを愚直に毎日繰り返すことで会社の
カルチャー、プロセス、社員の意識が変っていく。

彼を「マイクロマネージャーで、社長が係長クラスの仕事をしている」などと
批判することは簡単だが、やれるのなら「係長の仕事もできる」というのは
逆に経営者としては「スゴみ」なんじゃないかと思う。

社員を把握し、社内で起きていることを肌身感覚で把握し、即断即決で判断する。
その判断プロセスがロジカルであろうとエモーショナルであろうとすべて公表し
共有する。

経験的に言って、社長と一緒にいる時間が長ければ長いほど社員は「こういう時
は社長はこう考えるだろう」という感覚を持ちながら仕事をするようになる。
段々、一々お伺いを立てなくても社長の懸案事項、思考プロセス、ポリシーが
わかってくれば自分でできるジャッジの範囲が拡がる。それはいつのまにか
経営者マインドで仕事をすることにもつながる。

そういう意味で吉越さんがやっていることはシンプルなルールで社員に経営者マ
インドを埋め込んでいく、吉越DNAを埋め込んでいく一番いいやり方なのだ。

大企業になると社長の考えを理解していない役員と、その役員の考えを理解して
いない部長と、その部長の考えを理解していない課長の指示で仕事をするのだか
ら、ムダや手戻りが発生したり、調整に時間がかかるのは当たり前だ。

トリンプはそれを効果的に取り除いた。それをここでは「革命」と呼んでいる。

もし、早朝会議の様子を実物に近い形で再現した記録が読みたい場合は
「早朝会議革命~元気企業トリンプの「即断即決」経営」日経BP社 を読むとよい。

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