ラベル IT の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル IT の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2008年2月2日土曜日

「マイクロソフトの最期」はYahoo買収でファイナルステージへ~AOL&TimeWarnerの再来

いささかガンダム風の例えで恐縮だが、マイクロソフトという会社はいわば「地上
の重力に縛られた」会社である。あらゆる情報と機能が宇宙(そら)を舞い、そこ
から降って来るこの時代に、機能と価値がOSを始めとしたデスクトップ上に存在
していた時のビジネスモデルから離れきっていない。

もちろん、宇宙(そら、もういいか・・・)の価値も理解しているWindows Live
Platformはそういう思想だ。でも徹底できていない。なぜなら自らの元々のレゾン
デートルに配慮しながらやっているからで、これこそがクリステンセンの言う
「イノベーションのジレンマ」である。

今回、Yahooを62%プレミアムを払って買収するそうだが、これも株主を満足
させる選択肢としてはもはやそれくらいしかなく、かつ満足度は低いという最悪の
シナリオだ。

Yahooという会社はネット・ウェブ世代でもフロントランナーであったが、これまた
宇宙を自由に飛びまわれる時代にポータルという宇宙ステーション型集客ビジ
ネスをやっている残念な会社である。そう、まだ宇宙旅行黎明期で個人乗り宇宙
船のナビゲーションシステムのいいのがなかった時代には存在意義があった。
みんなここに寄っては知識を得て次のクルージングに出発したのだ。でも、もは
やナビゲーションシステムのいいのが出てくると皆立ち寄ることなく自由に動いて
いる。
(日本ではナビが使えない人も少なくないので、まだ重宝されているようだが・・)

さて、宇宙に足場を作りたい地上の重力に縛られた会社が、ようやく宇宙遊泳の
本格的な第一歩を踏み出すために宇宙ステーションを大枚はたいて手に入れよ
うとしている。これは先進的な結果が出るであろうか?

アメリカの買収は他国に比べてM&Aの成否が占いやすい国である。なぜなら
独占禁止法にうるさく合併が市場競争に与える影響について承認審査されるか
らだ。幸か不幸かこの合併は承認されるだろう。そしてそれは逆にこの合併がさ
して競争環境を独占に向かわせる危険性はないと判断されたに等しい。
悲しい話だ。

以前のエントリー(「通信と放送の融合の本質」)にも書いたことであるが、もう時代
は「契約者課金から第三者課金へ」「ポータルからパーソナライズドポータルへ」
とステージが移行してしまっている。

そういう意味ではYahooもまた、地上の重力(過去の競争・支配ルール)に支配
された会社である。地球が月を「自分たちの衛星だ!」と宣言することは広大な
宇宙にとっていかほどの意味を持つのであろうか?

2007年5月5日土曜日

マイクロソフトとヤフーが提携・合併も?

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2007050501000551.html
「合併交渉、進展なく終了 MSとヤフー、米紙報道」

ありえない。当然だ。本当にやったらGoogleの一人勝ちになる。

もうトレンドは
「デスクトップ」から「ウェブ」へ
「ポータル」から「パーソナライズ」へ
「月額課金」から「無料」へ

の3つのトレンドが支配している。

デスクトップから抜け出せていないマイクロソフトと
ポータルから抜け出せていないヤフーが一緒になって何の意味があるのか?

ビジネスモデルが旧式なもの同士がくっついたらGoogleを利するだけだ。

以前もまとまらなかったこの交渉。まとまった時が両社の終焉と心得よ。

2007年3月20日火曜日

「通信と放送の融合」の本質-楽天問題最終章

(2005年11月22日 Livedoor Blogからの再掲)

「銀行側からTBSと楽天に妥協案が提示されましたけど、何かコメントでないんですか?」というメールを多くの方にいただいた。

しかし、このエントリーのシリーズを最初から読んでいただければ(かつ「楽天 敗北へのカウントダウン」シリーズも)おわかりのように、この話はもう最初から結論が出ている。

ポイントを以下にもう一度まとめたい。

・通信(ネット)と放送の融合と言われていることの本質は放送事業者(及び電通等の広告代理店)が、現在ほぼ独占状態にあるスポンサー企業の広告宣伝費、販売促進費を通信(ネット)系事業者が分捕りに行っているということに他ならない。

・そういう観点から考えると現在、コンセプトとして正しいアプローチをしているのはUSENのGyaoと最近発表されたソフトバンクのTV Bank構想だけである。潜在的には今後、日本市場に導入されるであろうアメリカのTiVoのビジネスモデルだが、これはまだ日本での具体的な事業展開イメージが発表されていない。

・コンテンツに特定の紐付けを行うことは利用者の枠を狭めることになり、得策とは言えず、むしろ地上波テレビコンテンツ、映画コンテンツに可能な限り広い網をかけることが利用者の選択肢を拡げ、ひいては新たな広告媒体としてのクリティカルマス獲得への近道を意味する。

・コンテンツサービス事業者で月々の利用料、Pay Per View課金を行うのは敗北シナリオである。理由は日本の消費者は無料で高品質な地上波テレビコンテンツに慣らされており、欧米のようにCATVや衛星放送サービスがデフォルトで「コンテンツは有料」という素地のある土壌ではないからである。この傾向は日本だけでなくアジアの消費者でより顕著になる。(スカパー、WOWOW、その他の有料コンテンツ配信サービスが日本では伸び悩み、ほとんどが成功とはいえないのは、このためである。)
 
・よってコンテンツサービス事業者は広くかつ限りなく無料に近い価格でコンテンツを提供し、収入はむしろ集めた加入者の属性情報を加工することにより、自らを新たな広告媒体(メディア)とすることによって得る広告収入モデルを志向するしかない。

・つまりネットで今の地上波TV局のビジネスモデルを再現するのである。新しいモデルが違うのは、利用者の属性情報をデータマイニングしてよりタイミング良く、気の利いた広告がさまざまなデバイス経由で送られてくるため、従来の広告よりも投資効果が高いことである。ROIに敏感なナショナルスポンサーがこちらにシフトすることは明らかである。

・一方、TV局はディストリビューションの物理的なチャネルが早晩電波からネットに移行することを強く意識しなければならない。地上波デジタルという言葉があるが、2011年にはもう「波」のビジネスに頼る必要はない。地上にある光ファイバーベースのネットワークが十分に「波」のオルタナティブとして育っている。TV局は自らネット事業を行うか、ネット事業者と提携・買収するか、いずれも行わずに番組制作会社に専念しつつ、新興ネットメディア事業者から広告宣伝費収入のレベニューシェアを受けるモデルをイニシアティブのあるうちにネットメディア事業者に飲ませるかを選択しなければならない。

地上波デジタルサービス対応などに投資している場合ではない。危険を冒して上場したのは地上波デジタル化投資のためのやむにやまれぬ手段だったのはわかるが、もはやその意義は消滅しつつある。今となってはせっかく手にした資金は新たな市場で広告利権を有効に確保するために使われなければ株主説明責任を果たすことは今後できない。

・総務省は「波」のビジネスをベースにした行政や消費者誘導を早期にあきらめ、ブロードバンドネットをベースにした新たなビジョンを策定しなくてはならない。そして空いた周波数帯を携帯だけではなく、カーナビ、無線LAN技術、その他今後登場する各種モバイルサービス端末すべてに等しく配分し、それらの高機能化を促さなければならない。家電メーカーは消費者やキー局の地方ネット系列局が、地上波デジタルのためになんか誰も新規投資をしないことを早く意識し、むしろ家庭内でTVとPCのディスプレーをシームレス
で使えるデバイスやパーソナルディスプレーの開発に集中した方が良い。(SANYOやパイオニアの経営陣がこのエントリーを見ていたら一発大逆転のヒントはここにある。総合音響家電メーカーである必要はないが、この領域で生き残れれば十分に復活の目はある。)

・今後のキーワードは「タイムシフト」「プレースシフト」「デバイスシフト」である。ユビキタスと大括りにされるこれらのコンセプトだが、利用者に明確にイメージさせるためには従来の「いつでも、どこでも、誰とでも、どんな端末ででも」求める情報にアクセスし、コミュニケーションを可能とすることが求められる。

・日本における通信(ネット)と放送の融合像はプッシュ型コンテンツ配信をTVコンテンツが担い、プル型のコンテンツ収集をネットのRSSベースの検索技術が担う。これらは近い将来、「パーソナルポータル」という形で「利用者の手元」で融合する。繰り返す、融合の場はコンテンツ提供者サイドではない、利用者の手元で放送と通信は真の「融合」を果たす。

提供者側で融合をさせようとするあらゆる試みはすべて失敗する。楽天はここを見間違っている。ライブドアは間違いに気がついたが、次の手が打てていない。ソフトバンクはじっくりと両者の動きを見て、最善の手を見出した。まさにプロ野球参入の時と同じである。

・上記の考察からコンテンツをプッシュ、プル両サイドで利用者の手元で融合させる事業者が次世代の覇者である。

具体的なキープレーヤーは、USEN・ソフトバンク(ヤフーではない。ヤフーが従来型ポータル事業を志向する限り、パーソナルポータル陣営には勝てない)、インデックス、グーグル、TiVo、アップル、アマゾン、eBay、Skype、イーアクセス、CCC、各種ネット広告事業者、自らのメディアとしての可能性にいち早く目覚めた携帯電話サービス事業者、消費者属性情報を効果的にデータマイニングし、ダイレ
クトかつマイクロマーケティング広告につなげることができる、かつ属性情報と個人情報を峻別して安全に管理することができるデータ管理・加工事業者「だけ」であろう。NTTグループが勝ち組に残れるかどうかはドコモの携帯事業リソースを固定ネット系とどれだけ一体的に提供できるか、上記のプレーヤーと効果的なパートナーシップをどれだけ早期に確立できるかにかかっている。すでに出遅れているが今後一年以内にUSEN、ソフトバンクレベルに追いつくビジョンが出せれば、融合サービス提供事業者として、新たなメディア企業として生き残りができる。ダメだった場合は、「相変わらず月額利用料で食っていく旧世代ネットサービス事業者」としてジリ貧になるであろう。


・マス系のネットサービスは近い将来、広告収入を前提に限りなく無料に近くなっていくことを余儀なくされる。携帯電話料金も通話に関する料金は5年から10年スパンで無料化に向かうことが避けられないであろう。

・もちろん、無料では利用しない消費者も多く存在する。それは有料でもいいから、自分の属性情報を提供し代わりに絶え間なく広告を受けるのが嫌だという層である。マス消費者のネット系サービスの利用動向は将来的には二極化するであろう。

長々と書いたが、私は今後楽天がTOBをしようと、それが成功しようと失敗しようとあまり関心がない。面白おかしく取り上げることはするかもしれないが。

ただ、楽天は少なくとも通信と放送の融合という観点からは最初の段階でボタンを掛け間違っている。そもそものアプローチが誤りなのである。

「3年後、『三木谷の言っていたことは正しかった』と誰もが言う時代が来る」と三木谷氏は言う。でも、あえて言う。3年後そういう人は誰もいないと私は確信している。

「通信と放送の融合」の本質(その3)

(2005年11月3日のLivedoor Blogからの再掲)

「テレビ対IT、幹部らが討論 思惑の違い鮮明に」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/culture/update/1103/001.html

相変わらずネット側企業は「ネットでも番組配信できるようになった以上は関心を持つのは当たり前」「テレビが顧客にリーチする能力は魅力的」と言い、テレビ側は「文化が違うので融合ではなく提携だろう」と一歩引いた構えだ。

この議論でいつも問題なのは、この融合が常にサービス供給者側から論じられていることである。本当に融合させるためにはサービスを受ける消費者サイドの利便性や利用形態からアプローチしなくてはいけない。

TVという受像機、いわゆる箱に向かってなにがしかのエンターテインメントサービスを受けるということはDVR(ハードディスク内臓ビデオレコーダー)等でタイムシフトが起きても利用形態という点では相変わらずメジャーなポジションにある。だからこの利用形態はできるだけ崩さないほうが良い。その上で、いつの間にかテレビを眺めながらネットに抜けていく、いつの間にかモノを買っているというような利用形態を実現させなければならない。

その上で、更に今後のキーワードである「タイムシフト」「プレースシフト(ロケーションフリー)」「デバイスシフト(携帯でもゲーム機でも映像コンテンツを見れる)」を実現させる方向に誘導していくものでなければならない。

そういう観点から「通信と放送の融合」はむしろ新しい家電によって消費者サイドで実現される可能性が高いと思うが、現時点でこれに取り組み、3つのシフトを実現しているのはソニーだけだと思う。今後もデバイスベースで融合は進むと私は予測する。

2007年3月19日月曜日

安定株主化工作って?

(2005年10月28日Livedoor Blogからの再掲)

「TBS 安定株主60%超へ」

TBSが安定株主化工作を順調に進めているとあるが、考えてみるとこの安定株主化って今の時点で何も意味がないし、何を持って安定株主と言えばいいのだろうか。

この安定株主という方々は「いやあ、TBSさん。うちはおたくの株を長期保有します。絶対に他には売りませんよ。はっはっは。」と言っているのだろうと思うが一体、誰が何の権利で現時点でコミットできるのか。

こうした会社は株主総会で「どんなに高値がついてもTBS株は売却しません」ということを多数の賛成を以って決議したわけではないだろうし、そんなことは現実的にできない。

例えば、楽天が現在の株価の10倍の値段を提示してTOBをかけた場合に、それでも売らない理由を自社の株主に説明する完璧なロジックなど存在しない。

そういう意味で、安定株主なんて言葉もそういう株主も(資本系列グループ間を除くと)理論上は存在しない。逆にそういうことを自社株主に断りなくTBSにコミットしたとしたら、それこそ株主代表訴訟の対象
になってもおかしくない。(まあ、それだけで訴えられることはないけど)

まあ、実際にはそんなにアカウンタビリティに困るほどのプレミアムを楽天が乗せられる可能性は低いのだが。

2007年3月18日日曜日

楽天 敗北へのカウントダウンか?(その2)

(2005年10月28日のLivedoor Blogより再掲)

昨日、またSBIの北尾氏が楽天問題でコメントをした。

(ZAKZAKより引用:元URL http://www.zakzak.co.jp/top/2005_10/t2005102702.html )

楽天問題について、記者団が「何かお考えがあるのでは」と問いかけると、「そんなことをやっている暇はないくらい忙しい」。無関心を装いつつも、「一般論」として「敵対的買収は、企業風土、文化が違う中では難しい。失敗する可能性が高い」と指摘した。

ニッポン放送の経営権をめぐる攻防では、北尾氏は「騎士」としてフジテレビを助け、ライブドアによる買収を阻止した。今回も“姫”救出に向かうのかとの見方には「ノーコメント」。

だが一方で、「私にはいいアイデアがある」として、「あるところが協力し、あるところが乗り気にさえなれば、完全に楽天の意図をくじくことができる」などと意味深発言も。

(以上、引用終わり)

そんなことやっている暇はないと言いつつも一家言あるところが北尾氏らしいところ。このお方が関心がないわけがない。

で、前回の続きだが、この北尾氏の最後のコメントの「あるところ」をあえて埋めると「電通が協力し、ソフトバンクが乗り気になれば完全に楽天の意図をくじくことができる」が正しいだろう。

電通は9月の第三者割り当てを引き受けて以降、言うまでもなくTBSの大株主である。ここの意向を無視して通信と放送の融合ビジネスなんて悔しいが成立しない。それは以前のエントリーである「通信と放送の融合の本質」でも触れたように、今後のビジネスの本丸が現在地上波TVが圧倒的に独占している広告宣伝費、販売促進費の奪い合いだからで、電通はいまのところその流通のクリティカルポイントを握っているからだ。

今のところ、電通はTBSのパートナーとして楽天がいいとは思っていないようである。それは先日アマゾンとの協業スキームを演出してみせたところにもある。また、今週発売の雑誌には「楽天が来たらTBSは面白くなくなる」とか「社員が一斉拒否」等の見出しが目につくが、このあたりオピニオンコントロールを仕掛けていてもおかしくない動きが垣間見える。(彼らにそんな世論操作ができるのか?と思っている人もいるかと思うが、十二分にできる。最近も彼らの仕掛ける韓流ブームで沢山の人々が踊らされたのがいい例だ。総選挙の際のメディアの報道トーンが偏っていたことも疑ってみたほうが良い。)

電通は勝手に広告宣伝費や販売促進費を自分でコントロールしようとする事業体がいては困るのだ。だから通信と放送の融合は電通の利権を阻害しないように、かつ自分達がコントロール可能な形態で行い
たいと考えている。楽天のTBS買収なんて許すわけがない。

ただし、電通はコントローラーあるいはフィクサーであって表舞台に出ていくことはしない。だから全面に出る事業者を必要とする。電通は今、この期に乗じて楽天を逆に攻める事業者に手を回しているはずだ。それが今回はソフトバンク(正確にはヤフー)だと見ている。ネットビジネスにおいて電通とヤフー・ソフトバンクは密接な関係を持っている。そして今回、楽天のビジネスドメインを狙いにいく(楽天という事業体を狙いにいくのではない。有利子負債が5000億もある会社を会社ごと背負おうと思う会社はいない。あくまでも楽天の持つビジネスモデルと顧客を取りにいくという意味である)動機がヤフージャパンには十分にある。電通は追手でTBSの安定株主工作に協力し、楽天との統合は意味がないというプロパガンダを打ちつつ、搦め手からは楽天本体をネット業界再編の波にさらそうとしていると思う。両方が互いに相乗効果を出すシナリオだ。

色々とやり方について書くと差し障りがあると思う(まあ、こんな弱小ブログ見ている人はほとんどいないが)ので書かないが、遠くない将来、楽天に対する第二幕があく可能性があると思う。北尾氏があの
ようなことを言うのは楽天に対する予告であり、水面下ではもう準備は進んでいるのだと思う。

楽天はうまく取得株式を引き取らせる方向で動いたほうがいい。TOBなんて仕掛けたら楽天への仕掛けが本当に始まるだろう。三木谷氏がどんなに優秀で調整能力が高くても、今の楽天に二正面作戦を取るだけの余裕はない。

楽天 敗北へのカウントダウンか?(その1)

(2005年10月26日 Livedoor Blog掲載分の再掲)

今朝の報道で楽天がTBS株を20%近くまで買い増ししたとあった。

これで楽天は「敵対的」との批判を逃れられない。そしてそれはほぼこの買収劇が楽天の敗北に終わることを意味している。以前のエントリーで「楽天株はいい押し目」と書いた時期もあったが、もうそれはないだろう。

一方、TBSは想像以上に有利なポジションである。TBSがやるべきことは二つだけ。

1)諮問委員会で今回のことを「敵対的」と認識・認定しておく。
2)これ以上、楽天が買い増した場合は日興への新株予約権による対抗措置をとる「用意がある」とアナウンスする。

以上である。これに対して楽天は何ができるだろうか?

1)ここで買い増しを止めて時間がかかっても対話路線を続ける。
2)対話路線をあきらめて敵対的TOB(パワープレイ)に移行する。

1)をとった場合、TBSは急ぐ理由はないので、引き伸ばしにかかるであろう。株主安定化措置を講じつつ、一方で今回のAmazonとのような別の協業スキーむを発表し、「別に楽天である必要はない」という周辺
世論を醸成すればよい。楽天がそのうちに財務的に塩漬けを許容できなくなり、交渉のイニシアティブをTBSが握ることができる。

2)をとった場合はどうか?

楽天の三木谷社長は「TBSが対抗措置を発動すれば資本市場における汚点であり、株主から訴訟を起こされるだろう」と牽制しているが、実際に株主から訴えられるのは三木谷氏のほうが先になる可能性がある。
「敵対的と認定された場合、対抗策を発動するぞ」と言っている相手に対して中途半端なシェアを獲得し、五月雨でTOBに移行し、かつその資金調達をエクイティファイナンスでやって株式価値を希釈化させれば、TBSが対抗策をうつ前に三木谷氏自身が楽天株主から訴えられる。更にTBSが本当に対抗策を発動し、楽天株式の価値が二重に毀損された場合、株主の怒りはTBSではなく三木谷氏に向くであろう。

こうした状況を考えると、私は楽天がゴールドマンサックスと考えている資金調達はエクイティファイナンスではなく、TBSの遊休資産を先付けで担保にするLBO(レバレッジドバイアウト)であろうと思う。
三木谷氏自身が株主代表訴訟を免れ、かつTOBで既存株主がアカウンタビリティを保てないくらいにプレミアムをつけた価格を提示するだけの資金調達を行うにはそれしかない。ただ、その場合TBSも同様の
資産を担保に資金調達をして対抗してくるであろうから、その場合は財務的に余裕のあるTBSが有利である。楽天は時価総額こそTBSより高いが、所詮は期待値によってRevenue MultipleがTBSよりも高
いからそうなっているのであって財務を含めた基礎体力が勝っているわけではないのだ。

しかし、ここで楽天が気をつけなくてはいけないのは実は電通の動きではないかと思う。(思わせぶりになってしまったが、続きを書く時間がないので、また改めて・・)

2007年3月15日木曜日

「通信と放送の融合」の本質(その2)

(その1に続いてこれも2005年10月17日のLivedoor Blog掲載記事を再掲)


続きです。

7)地上波放送コンテンツが狙われるわけは、日本においては地上波TVコンテンツが一番消費者の日常の活動(特に可処分時間の消費)に溶け込んでいて、かつ無料なので心理的な障壁が低いからだ。したがってそういう心理的な障壁の低いアプローチコンテンツは仕掛けを少し工夫するだけで消費活動に誘導することが可能だ。そういう意味で消費行動を誘発するエサとして日本ではこれほどの対象の広がりと日常生活に溶け込んでいるものはない。

8)最初に書いたように「通信と放送の融合」と呼ばれる現象は究極的には通信事業者による放送事業者の囲い込みではない。むしろ放送事業者が囲い込んでいるスポンサー企業群の広告宣伝販促予算を誰が握るかということであり、放送事業者は現在の時点でそれらを抱え込んでいるからこそターゲットにされるのだ。パワーゲームでスポンサー企業の予算を分捕ることもできないわけではない。しかし、それはコスト的に失うものも多い。なぜなら既得権益を守ろうとする地上波放送局と広告代理店は今現在「メディア」という権力を握っているスーパーパワーであり、敵に回すのは得策ではない。ではどうするのか?

9)ニッポン放送に買収をしかけたホリエモンは当初の目的を達したとは言えないし、「通信と放送の融合」について納得のいく説明ができなかったと言われた。それもそのはずである。本当は莫大な広告宣伝販促費を既存メディアと新メディアを両方握った自分が最も最適な形で移行・共存させ、最適化したいなどという最終ビジョンをあの時点で話すことなどできるわけがない。本当はわかっていなかった可能性もあるが、ホリエモンは実は感覚的には見通していたと思うし、現に裏ではそういう発言もしていた。

10)地上波放送局が持つ機能はコンテンツ制作だけではない。編成機能もあれば広告営業もあるのだが、今後のインターネットや携帯の持つリアルタイム、ダイレクト広告機能のことを考えると後者の編成・広告営業機能は新メディアで代用可能だ。しかし製作機能がなくなることはまずい。ここだけは高品質を保てるだけのキャッシュフローを保ってやらないと競争力を失ってしまう。質の高いコンテンツはスポンサーの評価も高いので高額な広告枠販売ができて大丈夫ではないかとも思うのだが、全体的に放送局の収益が落ちてきている昨今では低いレベルで制作費をクロスサブさせるよりは全体的に安定したキャッシュを供給してやる必要がある。競争力が落ちてからではまずいのだ。ここに通信系IT企業が地上波放送局を早く囲い込もうとするメカニズムがある。
  
☆☆閑話休題☆☆
楽天はいかにも融合し、共同持株会社を作れば双方にメリットがあるとTBSに持ちかけているが、それは「方便」でしかない。共同持株会社では楽天のキャッシュフローをTBSの本業たる放送コンテンツ制作にクロスサブさせることはできない。事業体として一体化させなければダメだということは三木谷氏はよく
わかっているはずだ。もしわかっていなければTBS経営陣も株主も納得させることはできず、ライブドアの二の舞に終わる。もし楽天とTBSを上場させた状態のまま共同持株会社の形態にこだわるならば、事業会社間で配当の形でキャッシュを循環させる必要があるが、これは効率が悪い。かと言って現在の両社の株式をバイバックして持株会社を設立するのは恐ろしい額のキャッシュがいる。三木谷氏がショックを和らげようとしているのは理解できるが、早晩今の提案内容では行き詰るはず。TBS経営陣としては「既に持株会社形態をとっているTBSのストラクチャーを活用してTBS持株が楽天の株を相当数持って配当の形で楽天
のキャッシュを吸い上げたほうが三木谷さんの言っている融合系の実現とネット系企業から放送事業へのキャッシュシフトにはいいのでは?」という逆提案もできるかも。たぶん今頃TBSではスポンサーファンドを探してパックマンディフェンスを企画しているはず。うまくいかなくても楽天と株式交換して取り戻せば
いい。また近い将来に楽天株は急上昇するだろう。今日はいい押し目ということか。

(その後、楽天のファイナンスが苦しいということで、エクイティファイナンス必至ということなのでどうなるか予断を許さず。MSCBで、乱高下??)

11)現在、消費者属性情報を本業で収集できている通信系IT企業がいくつかある。その中で代表的なのが楽天、アマゾン、eBay、そしていつの間にかITMSを通じて流通事業に出てきたAppleといったマス向けeコマース企業。次に検索エンジン系ポータルであるGoogle、Yahoo、MSN、3つめは携帯事業者である。属性情報への依存度と既に収集した情報の密度の高さから考えてより既存メディアへの意欲や親和性が高いのはeコマース系であろう。しかし検索系でもGoogleは特殊な動きをしている。キーワードは「パーソナル指向」である。

12)今まで書いてきたように今後は消費者の消費行動をできるだけパーソナルな活動領域で捕捉してそこでの属性情報を蓄積することがより効果的な広告宣伝メディアとなる必要条件である。そういう意味でネット上の特定のところに情報を集積してそこにアクセスと広告を誘導するといういわゆる「ポータル」事業というのはこの流れに逆らう動きとなる。もちろん各社ともパーソナライズ機能の強化には力をいれているが、ポータルサイトの価値を維持することとパーソナライズしたサイトの機能強化を両方とも最適化していくのは相当なジレンマがあるはずだ。そこを考えると検索系でパーソナライズを本格的に指向しているのはGoogleである。今後はeコマース系とGoogleがどのように連携、合従連衡しながら、かつ地上波放送コンテンツを取り込みながらパーソナル・ダイレクト広告メディア市場を形成していくかが焦点になる。

☆ポータルとパーソナルポータルの対立の構図についてはまた別の機会に触れたい。

「通信と放送の融合」の本質(その1)

(以下の記事は2005年10月17日にLivedoor Blogに投稿していたものを現時点に於いても考察として何らかの意義があるであろうということで再掲するものである。事実、この記事は各種検索エンジンサービスによってもかなり多くの閲覧を得、その後発表された多くの著作にコンセプトを『応用』されている。その功績?に苦笑しつつ・・・。)


楽天の動きを契機にまた「通信と放送の融合」というキーワードがメディアをにぎわわせている。この動きは「融合」という言葉で錯覚しやすいが本質的には「消費者属性情報を誰が握り、広告宣伝費と販売促進費
という大きなマネーフローを誰がどのように握るか?」という点に帰結する。

よって単に企業間の合従連衡のパターンがどうかとか融合したビジネスがどうつくれるかという表面的な議論では事の本質はつかめない。

言い古されていることも多いことを承知で少し謎解きをする。

1)現在のマス4媒体(テレビ・ラジオ・新聞・雑誌)はスポンサー企業の広告出稿、イベント等のSP費用によってコンテンツを製作・編成して収益を得ている。これはメディア媒体がスポンサー企業の広告宣伝販促行動にとって効果的だという前提(いまや幻想)によって支えられている。しかし、マス4媒体を通じて流れる広告は最終消費者に必ずデリバリーされているわけではない。また、消費者の属性に応じた効果的な広告のデリバリーが行われていない以上、スポンサー企業にとってのROIは低位安定するという宿命がある。

2)インターネットと携帯の普及はスポンサー企業が媒体から最終消費者の属性を得ることができれば、より購買行動に結び付けやすい広告宣伝販促をダイレクトにリアルタイムにかつ選択的に流すことを可能とする。

3)楽天やアマゾンといった新興IT企業(かつ現時点で馬群を抜けてとりあえずの勝ち組になっている企業)は自社のサービスを利用している消費者の性別・年齢・住所・関心事・過去の購買履歴という消費者属性情報を莫大に蓄積している。他のインターネットメディアも少なからずそうである。この属性情報は広告宣伝販促を行おうとするスポンサー企業からすれば喉から手が出るほど欲しい「お宝情報」である。とにかく企業ブランドを広めればよいと考える企業は除いて、直接広告の受け手に購買行動を取らせたい企業にとって、マス4媒体ではリーチし得ない消費者にダイレクトに繋がることを可能とするインターネットと携帯は新しいメディアだ。そうなるとROIに敏感な企業ほどネット広告・携帯広告にシフトしていくことは自明である。放送局の収益がさがって、新たなメディアが収益を伸ばしているのはそういうことだ。

4)ところが、現在のIT企業はまだこの可能性を十分に開花させてはいない。自社のサービスを通じて得た消費者属性情報はもっぱら自社のサービスをさらに利用させることに活用されている。しかし、もう彼らは気づいてしまった。

5)現在の日本の広告宣伝費・販促費市場は約5兆円。この、今までマス4媒体に独占されてきた莫大なマネーフローを自分達のフィールドに寄せることができたら・・・・。そしてそれは可能なところまで来ているのだ。自分達が従来のマス4媒体に成り代わるメディア企業になればよいのだから。

6)消費者の可処分所得・可処分時間には限界がある。IT系のサービスが今後いくら便利になろうとも、最終消費者から「引っ張れる」金には限界がある。既に通信キャリア系IT企業が音声ビジネスやインターネット接続サービス+αのサービスを提供しているが、これらは競争と価格低下で数年以内に無料か公共財として限りなく安いサービスに成り果てる。よって今、勢いのあるIT企業とはこうした無料化へ向かうインフラサービスの上で展開するプロダクトを持っている企業であり、属性情報を着々と蓄積している企業である。さりとてこうした企業でも利用料、手数料収入には限界がある。時代とともにインフラサービスの二の舞になって価格低下圧力と過当競争によって収益が圧迫され始めることは見えている。となれば5兆円市場を誰がいつ巧妙に自社収入として取り込んでいくかが鍵になっていくことは論を待たないであろう。